油断ならず

 

昼間のうちに

おおまかなイベントは無事に終了し

のんびりと当直に入った。

 

シャワーを浴びて

胃もたれしないハンバーガーを食べて

胃もたれしない映画ロッキー4を観ながら

ベッドでゴロゴロしていた。

 

 

途中からロッキーに飽きて

スマホでゲームしたけど

ゲームあんまり上手じゃないので

すぐ負けた。

 

寝るには早いなあ。

テレビも面白そうなのやってない。

 

伸びをしながら

思わず口をついて出た言葉!

 

「あー、ひまだなぁ」

 

 

 

はっ!

 

まずい!

 

医療従事者の方であればご存知だろうが

当直中に踏んではならない禁忌肢というものごある。

 

 

どんなに暇な当直でも

「暇だ」と言葉にしたとき

言葉は言霊となるのだった。

 

 

「わー神さま今のは冗談です。

全然暇ではありません。

ロッキー5を観なければならないのです。」

急いで自分の言葉を否定するわたくし。

 

耳を澄ましてみる。

 

とくに何も聞こえない。

静かな夜である。

 

試しに病棟に電話してみる。

ひょっとして明日の予定カイザーの方が

陣発とかしてないかしら?

 

え?してない!?

良かった。

 

杞憂であった。

 

もう起きててもロクなことないので、

寝てしまうことにした。

 

 

しかし

なかなか寝付けない。

 

やっぱり暇なんて言っちゃったからかもしれない。

右と左に順番に寝返りを打つものの

目が冴える。

ついさっきのビリヤードゲームを再開

ますます覚醒する。

 

そんなことを二時間ばかり続けてやっと

眠気がひたひたと忍び寄ってきた。

 

この眠気を大事にしなければならない。

一度逃してしまえば眠気はなかなか戻ってこないのだ。

 

目をつぶって仰向けになって

自分の呼吸に集中する。

 

「ひつじがいっぴき、

ひつじがにひき……」

 

 

あ、いい感じ。だんだん眠くなってきた。

 

もしかしたらもう寝てるかもしれない。

もう少しで深い睡眠に入れる。

 

 

そういう考えが頭の中に浮かんだ瞬間っ!

 

当直室の電話が鳴った。

2:30 amであった。

 

令和二日目が始まるには

早すぎる時間

「一度吐いた言葉は飲み込めない」

を久し振りに体感したのであった。