NCPRシミュレーションコンテスト

診療と当直で私は参加を見送ったが

当院スタッフの4名が東京へ向かった。

 

愛育病院での

NCPRシミュレーションコンテストに

参加するためである。

 

NCPRは

Neonatal Cardiopulmonary Resuscitation

新生児心肺蘇生である。

 

産婦人科領域での

シミュレーショントレーニングの

草分け的な存在でもある。

 

 

愛育病院のスタッフの方々が

そのコンテストを開催してくださっているのだが

我がフクイ産婦人科クリニックからも

はじめて

チームを派遣することにした。

 

 

自発的に練習を重ねて

臨むコンテスト。

引率者の助産師ナッちゃんには

逐一報告をするように

指示した。

 

が、

特にそんなに報告もなく……。

(´・ω:;.:...  

 

コンテストといっても

どういう風に

実施するのであろうか。

 

他の参加者の実力や

各所属施設

使用する機器

ファシリテーションの方法など

情報戦で後手にまわっておる。

 

わかったのは参加チームが6つということだけ。

 

送り出した者としては

心配していたけれど

予想通りというか

翌日

報告にやってきた

4人の顔は浮かなかった。

 

 

参加6チーム中

5チームは

なんと

愛育病院のチームだったようだ。

 

「せんせ、あちらは全員プロでした…。」

 

いや君らもプロだろ。

 

「練習の成果を全く発揮できませんでした。」

 

4人中3人は泣きそうである。

 

「シミュレーションの人形が

すごくリアルなやつで

そこからしか情報を取れなかった。

器具もいっぱいあって

どれがどれかわからなかったです。」

 

「雰囲気にも呑まれました。

どのチームも

今年は優勝しますとか、

この日を待ってましたとか

盛り上がり方が半端無かったです。」

 

 

 

うちの参加者は皆

自尊心が深く傷ついた様子であった。

 

 

世の中の広さを知ってしまった。

 

知らないままだったなら

最近勉強会も開いて

昔の自分たちよりも

レベルが上がってきたのだから

それだけで

幸せだったのにな。

 

力不足で

流しそうになる

涙は

赤ちゃんの家族が流すかもしれない涙だ。

 

我々が

泣かなければ

他に泣く人ができてしまう。

 

 

毎日練習を重ねる。

それが当たり前なのだとかわかってくれたのは大きな進歩だった。

 

落ち込んでいる

看護師と助産師を

目の前にして

私自身

胸が締め付けられた。

 

 

挑戦してみて

当初の目論見とは異なり

全く歯がたたなかったのがわかったはず。

 

周産期センター

新生児科が

どのくらいのレベルであるのか

体感しただろう。

 

一次施設には一次施設の

レベルがあるとは言え

同い年くらいの

スタッフとの

実力差を

痛感したのだ。

 

いや

実力差ではない

姿勢の違いだ。

 

 

8割から9割ほどの

新生児は

勝手に泣いてくれる。

 

新生児を助けているのではない。

新生児に我々が助けられているのだ。

 

残りの1割の新生児を

助けるために

厳しいトレーニングを当たり前のものとして

こなしている人々がいる。

 

 

「先生、NCPRのインストラクターになるのは大変なんですか?」

参加した4人のうちの1人

助産師が尋ねてきたので

 

「きちんとやれば俺でもなれたくらいだから

大丈夫だよ。心配しないで」

 

「違うんです。

インストラクターになるのを遅らせてもいいですか?」

 

「なんで?」

 

「インストラクターになってしまうとコンテストに参加できなくなってしまうから」

 

インストラクターになるのが目的でもないし

コンテストで勝つことが目的でもないけれど

それが新生児を救うことに繋がるのであれば

何度でも挑戦したら良いよ。

 

 

「先生、すみませんでした」

 

 

謝ることはない。

君たちに責任はない。

全ての責任は私にある。

 

「いや

そうじゃなくて。お肉」

 

え?

 

「帰りに焼肉食べさせていただきました。

おいしかったです。

これ、領収書です。」

 

 

ふぁ。

 

「こんなに食べたの…?

4人で?

ホントに?

若いね…。」

 

「とってもおいしかったです。

また行ってもいいですか?」

 

 

お、おう…。