帝国ホテル

患者さんと話をしていて

時々感謝の言葉をいただくことはある。

もちろん耳の痛いお言葉もいただく。

 

どちらも

とても

ありがたい。

 

しかし

泣かれたのははじめてである。

 

なんか

やらかしたのかと思ったけど

怒っているふうでもなかった。

 

赤く涙を溜めた目で

「ありがとうございました」と

その患者さんがおっしゃった。

 

理由を尋ねると

うちのスタッフに

「すごくよくしてもらった」と。

 

以前の当院は

冷たい対応が多かった。

 

アンケートにも度々

書かれていた。

 

私が把握しているだけでも

収入が低い世帯や

外国人

おどおどしている方

弱者にとても冷たかった。

 

前の事務長に

「あの患者さん

お金が払えないかもしれないので

なんとかしてあげてください」とお願いしたら

「任せてください」というので

みてたらその場で

「うちでは診られないから市民病院に行きなさい」って。

 

開業医なので最終的にはそうなるにしろ

わたし

アメリカで子供が生まれたときに

同じように医療費に困ったのだけど

そんな木で鼻をくくったような対応は

されなかった。

 

 

 

「こんなことで呼ぶんだ」と

嫌味をいう看護師を目の前で見たし

「あの患者は

変わってるので

扱いが難しい」

「我慢強くない」

と突き放す場面にも遭遇した。

 

患者の内診の時に配慮が足りず

こちら側で私語を続けていたり

笑ったりしているスタッフもいた。

 

自分が下半身を露出した状態で

カーテン越しに誰かが笑っていたら

どう思うのか。

 

そういったことに関する

クレームは当然

たくさんあったのだけれど

改善しようとして

まとめて問題点をさがそうとしてみたら

都合の悪い結果のアンケートは

既に

該当のスタッフが

捨ててしまっていたので

フィードバックがままならなかった。

 

もちろん

スタッフに同情する面もある。

忙しくて余裕がない状況が何年も

放置されてきた。

 

 

そういうのは全部やめようという話になって

勤務の見直し

一人一人の技術の向上を工夫した上で

アンケートの回収BOXに鍵をかけ

新事務長が管理することになった。

 

その後

スタッフが大幅に入れ替わって

アンケート結果は

そんなに悪くはなかったけれど

それでも

改善しなければいけない点は多かった。

 

 

「帝国ホテルのサービスを越えろとはいわないが

せめて同じくらいになろう」

といってキマッタ!と

思ってたら

「帝国ホテル行ったことありません」

っていわれて困った。

 

何人か

帝国ホテルに食事に連れていった。

 

自分より年配の

ホテルの方たちが

我々を丁寧に

接客してくださる。

 

 

一方、

当院の若手スタッフたちは

ワインを飲んで

どんちゃん騒ぎをしていた。

それはともかくとして……。

 

収入や

見た目や

肌の色や

性格で差別しないのが

我々の仕事でしょう。

 

 

細かいことを

口煩く

言ってきて

まだ足りない面が多いものの

改善してきているなとは思っていた。

 

 

そして

今回である。

 

まさか

患者さんが泣いて

感謝の意を示してくれるほど

だったとは。

 

うちのスタッフたちは

素晴らしい。

 

誰彼分け隔てなく

帝国ホテルの

スタッフのように…とは

いかないまでも

丁寧に

患者さんに

接している。

 

帝国ホテルのスタッフにはなれないけれど

帝国ホテルのスタッフだって

お産を取れないだろうからおあいこだ。

(なにが?)

 

 

なんか

嬉しい。

 

素晴らしい

スタッフがいて。

 

もちろん引き続き

改善すべき点はある。

 

数日前にも

厳しい内容の

アンケートがあった。

 

それは

昔なら

「こういう風に思う人もいる」

「何人かに一人は仕方がない」

「同じようにやってあげてるのに

この人が変わってるだけだ」

くらいの

感じで

流されていた

アンケート内容だった。

 

でも

もう

そんなことはない。

 

みんな

自分たちで

自発的に改善していくと思う。

 

 

「一人目を生んだときより

ずっと優しかった。

今回は二人目なので諦めていて、

放置されると思ったけれど

すごく丁寧になっていた」

 

そんなこと

言ってもらえてありがたい。

当院は患者さんにも恵まれている。