首を切る

いままで何人かの努力をしてこないスタッフが

自発的に辞めていったが

その最終段階として

ついに

二十年来の非常勤医師にお引き取りいただいた。

 

できないのであればこなくて良いと伝えた。

 

川越先生だ。

 

彼は

男気があるように装い

それはそれでいいところではあるが

気は小さく

癇癪持ちで

子どもっぽくて

持て余していた。

 

三年前にも川越先生の

常勤先である病院へ出向き

そこの院長先生に

「辞めさせてもいいですか?」と

尋ねた。

 

「いいけど、大丈夫?」
院長先生はわたくしを心配してくれた。

 

大丈夫じゃないけど

仕方がない。

 

コストが膨大にもかかわらず

売り上げに貢献していない。

 

木曜の当直と

土曜午後から日曜夕方までの

当直で年間二千万。

 

分娩は基本的にしない。

常勤の医者がやっていけ。という方針。

 

陣発がくれば常勤医を呼ぶ。

 

患者からのクレームで

あの医者を辞めさせろと

いわれたことがあって困惑した。

今回その通りになったわけだけども。

 

婦人科の開腹手術は面倒。

ラパロを始めたら

やっぱり婦人科の開腹をやろう。

二転三転ばかりの、どこかで聞いた話。

 

それなのになぜ

その金額を貰えると思ったのか。



そういう話を
焼肉食いながら話したり、

日常的に

お願いしたり、

忘年会では

掴みかからんばかりに喧嘩したりしたあとで、

一旦

双方納得したはずであった。

それだから、その後しばらくは

引き続き
働いてもらっていた。


しかし
他の非常勤の医者が分娩をとると
「あいつはなかなか使える」

と。偉そうに。相変わらず。



その言い方で言えば
「あなたはなかなか使えない」
になるはずなのに。


働いているスタッフたちのボーナスは減ってしまったなか
なぜ
働かない医者の給料が減らないのか。

産婦人科医が
不足しているのをタテに
自分のやりたい仕事だけやって

金を持っていかれるのは

同じ勤務医の後輩としてならば

笑って見過ごせていたが

経営者になったいまとなっては

恐ろしいだけだ。

 

 

こういう医者がのさばっているから

産婦人科の若いヤツの仕事がますます増える。

 

 

それでも

だいぶ我慢をしてきた。

 

助けてもらっていた点があったというのは

確かだし。

 

ただ

こうしたことに加えて

頻繁に軽口を叩く。

 

軽率に茶化したことを言い出して

今回は前院長の

所業を面白おかしくいいたてたので

もう無理だった。

 

働かないうえに

人一倍金食い虫で

さらに

後輩といえど

理事長である

わたしの精神的なストレスに

なるのであれば

メリットが

何もない。

 

 

だらしがないのは

いままでの理事長と院長。

 

ずっとハッキリと言えなかった。

後ろめたいからなのかなんなのか。

媚びすぎだと思っていた。

 

 

覚悟が全然足りない。

 

この人たちはみなさん

大人になってから

なんにも挑戦したことが無いから

負けた気にはならないだけ。

 

子供の頃の成績とか

大学の偏差値とか

そんな話ばかり。

 

今回で

事故物件3人のうちの2人目まで

精算した。

 

 

我々は

少なくとも

挑戦はする。

 

看護師、助産師、事務が

挑戦しているのに

医者が楽をするばかりでは

示しがつかない。

 

挑戦する。挑戦する。

 

失敗したら

笑おうとしている者が

いるのはわかっている。

 

口では責任は俺がとるとかいって

実質はなにも責任を取ろうとしない

人間に何度も騙されてきたので

わたしはそうなりたくない。

 

自分の責任でやってみる。

できなければ撃ち殺してほしい。

 

それは

傀儡で

終わるよりはマシだからだ。

 

 

いずれこうなるのはわかっていた。

自分の中の気持ちはもう固まっていたから。

 

さようなら

川越先生。