たとえ好きでも、なるべく正しいこと

週に4回の当直でぐったり。

 

流石に

多いわこれ。

 

久しぶりのこんな当直。

研修医以来。

ほとんど寝当直だから体力的にはいいけどさ。

 

子供と会えなくて

本当に

寂しい。

 

子供好きにはきつい。

 

ずっとこの調子で

当直が続くのだろうか…。

当直のために生きる男……。

 

それもこれも

川越先生に

辞めてもらったせいなので

自業自得的な

何かなのである。

 

自分がやったことが正しいかどうかは

判断がつかない。

 

でも

神様がやっていることだとすれば

正しいだろう。きっと。

 

 

ツムというナースがいてだね、

子供みたいな子なんだけど

なんだか看護の才能があって

保健師とか助産師になればいいのにと

いうのに

ケラケラ笑ってて

無理でーすって。

 

私は

彼女のことをかっていたのだけど

「バミュがラパロで張り切ってる」って

茶化しているという噂を聞いた。

 

それで

まぁ

私もそんなつもりでオペをしているわけではなかったし

がっかりというか

残念だった。

 

彼女は

器械出しにも素早くて

才能ある子だし、ラパロでも活躍する子だし

その分、

期待を裏切られた気分だった。

 

勉強会でみんな集まった時に

はっきりと

「ツム、不愉快だ。嫌ならもうラパロに入らなくていい。」と

言った。

 

 

最近うちはできる限り

SILSっていって

お臍だけからのアプローチの

術式で

終わった後

手術したのもわからないくらいに

なることを目指しているのね。

 

これ

時間もかかるし

面倒なのだ。

 

どうしてこんなことするかといえば

私も

ラパロを受けたことがあるけれど

小さい傷でも

残る人はいるんだよね。

私も残ってる。

自分では北斗の拳みたいで、ま、いっかと

思ってるけど

でもさ

自分の子供だったら

傷を残したくないじゃない。

 

子供が

手術を受ける時の

親の気持ちなんて考えただけで

胸が締め付けられるじゃない。

 

そうしたらせめて

誰かの子供である

患者さんのお腹の傷だって

見えないくらいに

したいでしょう。

限界があるにしても。

 

だから

そんなのを茶化されたら

本当に

自分が惨めで

 

ツム、なんだよ

って感じになった。

顔も見たくないって。

 

ツム、お前は

カイザーを全例ボンドをやめて

真皮縫合に切り替えて綺麗に縫いはじめたとき、

「時間がかかってごめん」って言ったら

「でもこっちの方が患者さんは嬉しいと思います」って

いってくれたじゃんか。

それなのにさ。

 

「お前はもういいよ」私は言った。

 

ツムは

「はい」と

ひとことだけで

言い訳も口答えもしない。

 

私は

カッカしながら

院長室に

戻った。

 

その後ろからさ

ナツっていう

助産師が

入ってきたわけ。

 

この子も若い子なんだけど

大学出たあと

間違って開業医に入職しちゃった変わり種なんだよ。

信頼している。

 

その子が

モジモジしながら

「ツムちゃんじゃありません」って。

庇うのな。

 

荒ぶる

私に反撃されるのを

覚悟で。

 

ナツもさ

誰を売るでもなく

言いにくそうにしていたから

こっちも察した。

 

そうか、川越先生なら

先輩だし仕方がない。

 

川越先生に

同意を求められたら

この若い子たちはハイとしか言えないだろう。

 

 

川越先生、

全く変わらないなと思った。

 

それで本当に困った。

ずっと困っていたけど

さらに困った。

 

「俺はパートだから」といって

都合よく仕事を選り好みするうえに

偉ぶって主導権を握りたがる。

 

看護師たちは怖いから何もいえない。

 

 

彼が

太った妊婦のことを

デブと呼んだり

元気に泣いている赤ん坊に

うるさい首を締めろというと

師長が慌てて取り繕う。

でも直接は

注意できない。

 

自分はふざけているつもりなんだよ。

それはわかる。

 

でもほどがある。

 

看護師に

妊娠したら俺がアウスしてやると

いってみたり、

 

乳揉み、三回で許してやる、

そういう軽口をオペ中に繰り返していたから

 

さすがに

私も

いい加減にしろと思って

「先生、セクハラですよ」と注意をした。

 

「みんな笑っているじゃねぇか、

セクハラじゃないだろう」

 

こういう賞味期限切れの

考えしか

持ち合わせていない。

 

これで65歳になるんだろ。

終わってる。おじいちゃんなんだよ。

 

誰も注意してこなかったのか。

それが生きる道だと思っていたのか。

 

 

当直を随分

埋めてくれていて

ナースステーションで

長い時間を過ごす。

 

看護師にとって

機嫌のいい時はいいけれど

悪い時は

腫れ物に触る感じ。

 

 

私は

どうすればいいか。

 

当直と川越先生を取るか。

スタッフを取るか。

 

悩んだ。

眠れないくらい悩んだ。

 

 

ツムにもナツにも

厳しいトレーニングを

課している。

 

みんな努力している。

 

努力していないスタッフたちは

辞めていった。

 

例外はあり得ない。

 

医者でも

川越先生でも

ダメなものはダメだろう。

 

川越先生には

不思議な魅力がある。

 

それで昔

ブログに書いていた時も

読者から人気があった。

 

 

別に

隠すつもりはなかったはずだし

なるべく正直なつもりでいたけれど

でも書けることしか

書かなかったということが

よくわかった。

 

そういう自分の態度は間違っていたと思う。

 

答えは決まっていた。

 

あの人に

はっきりと言えるのは

わたししかいない。

 

歴代の

医者たちも

みな口をつぐんでいたから。

 

 

65年間、

全ての人が

甘やかした結果が

もう今更どうにも

ならない人の完成だった。

 

川越先生は

いつも

言っていた。

 

社長が買ったフェラーリ

俺が買わせてやったんだ。

当直をいっぱい埋めていたことからの

発言だと思う。

 

でもお金もらってたじゃんか。

そして川越先生の当直の孫請けをしていたのは

私たちだよ。

 

 

私たちは言う。

 

川越先生の貯金の2億円、いつも自慢気にいっているその金は

看護師たちが貯めさせてやったんだ。

(いや、私も貢献しているだろう)

 

なるほど

その頭の回転なら12歳で神童と呼ばれても

おかしくない

でも65歳で12歳の頭のままでは

どうかしてる。

 

 

そういうわけで

たとえ好きではあっても

私は

川越先生ではなく

職員をとった。

 

職員にだけ

負担をかけておいて

自分の

休息のために

川越先生に

お手伝いをお願いするわけにはいかない。

 

そもそもお手伝いになってないし。

 

 

忘年会で怒鳴りあったその前から

我々には

何度か変わるチャンスはあったと思う。

 

しかし

お互いにそのチャンスを活かせなかった。

 

 

 

そうして

川越先生には辞めてもらった。

 

 

久しぶりに

家に帰ったら

子供が

赤ちゃんの時みたいに

出迎えてくれて

私に飛びついてきた。

 

最高の瞬間だよ。

 

出かける時に

「バイバイ」っていわれるのは

最高に辛いけど

この瞬間のために頑張る。