危機的状況のなかの弛緩

このコロナ禍で

産婦人科のシミュレーショントレーニングコースや勉強会も

軒並み中止になり

いくつかは

オンラインコース

移行しているようなのだけど

その間も

赤ちゃんは産まれる。

 

ここで赤ちゃんを産まなければ

コロナの思う壺なので

引き続き

人類は

産めよ増やせよ

いく。

 

そのお手伝いを

するために

我々は

さらに

レーニングを積むのである。

 

もちろん

レーニングは

大変である。

すぐに成果があるかわからないくせに

負担は一丁前だから。

 

特に

年輩者はツラタンであろう。

 

とすこは

70に迫ろうというのに

だいぶ年下の

理事長に

分厚い本を渡されて

読まなければならない。

 

よく辞めないなと思う。

 

辞めた人たちも沢山いる。

辞めてもらって

当院の

レベルが向上した面は

あるが

やる気があって

頑張っているので

あれば

当然サポートはする。

 

 

にしても

こちらから観察していても

なかなか

手強い。

 

記憶力が

ドーナツくらいまで

退化しているそうなのだけど、

とすこ、

覚えてくれよ。

 

「これ患者さんに渡してください」とお名前を伝えて

「わかりました」と

振り向いたら

「あれ、誰でしたっけ?」

もう忘れてたりする。

 

とても

ピーシーキューブPC3(Perinatal Critical Care)

の流れなど覚えられないのである。

 

 

PC3は

大阪の産科と救急救命医の

ドクター、スタッフが

中心となって

作った

母体救命のシミュレーショントレーニングである。

コウノドリの荻田先生が発起人の一人で

ドラマの主人公役の綾野剛さんもこのコースを受けている、これマメな、私も誰かに教えてもらっただけだけど)

 

 

ALSOやJCMELSなどの

産科三大シミュレーショントレーニン

うちの

ひとつだ。

 

アルゴリズム

すごくシンプルで

liner(線形)な設計をされているので

私自身

スタッフに

色々説明するのに

重宝している。

 

これを基準に

当院の有志たちが

PC3のアルゴリズム

ALSO, JCMELSを

うちのような一次施設に合うように

若干修正を加えて

緊急時には使用するようになった。

 

 

たぶんなのだけど

気がつけば

当院での

危機的状況が

激減した。

 

スタッフ間に

危機的状況を

起こさないという

意志が醸成されたからだと思う。

 

前任者の

頃は

危機的状況を

楽しんでいるような者がいて

助ければいいんでしょという

雰囲気があった。

 

 

いまでは

少しでも異変があれば

「Critical」「クリティカルです!」

と叫ぶ。

 

最初の頃は

やっぱり

気恥ずかしかった。

 

もう一人の自分が

「なんだよクリティカルって」とか

囁くわけ。

 

でも

恥ずかしさと安全を天秤にかけたら

答えは明白なので

続けたところ

数ヶ月(こんなにかかるもんだとは思わなかったけど!変化を起こすのは大変)で

いまでは事務のスタッフにまで浸透した。

 

ところで

とすこである。

 

引退

が近いのであれば

やむを得ない、許容するか、

あるいは

やはり

一人でも

弱い者がいれば

そこから綻びはじめるので

レーニングを続けるか。

 

結論としては

出来なくとも

続けることにした。

 

 

努力は続けなければならない。

 

それが患者さんに対する

誠意だろう。

 

 

ある日

むこうで

バタっと

音がした。

 

視野の隅で

とすこが走っていくのがわかった。

 

 

とすこがなにか声をあげようとしている。

 

「く、く」

 

そうだ!とすこ!

Criticalを覚えたんか!

そのまま

大きな声で叫べ!

 

 

「く、く、クリスタル!」

 

 

みんな

ズッこけた。

 

しかし

気持ちは伝わった。

 

患者さんのもとに

集まって

治療した。

 

患者さんが

そんなに危機的な状況でなかったけれど

Criticalの宣言は

空振りでもOKなのだ。

 

しかし、

盛大な空振りであった。

 

野球の試合で

バスケをしたみたいな感じだ。

 

スタッフの

みんな

緩んで

笑っている。

 

同時にみんな知っている。

古希の

看護師が

精一杯

努力をしている。

 

なぜかは

わからないけれど

なんとなく

泣けた。

 

なんとなく。

 

なんとなくクリスタル。