タバコ

なぜか看護師には煙草を吸う人が多い。

 

うちにも吸っている人がいる。

 

看護師以外でも煙草を吸う職員がいる。

 

医者でも喫煙者がいたけれど

煙草を吸う医者は

全て辞めていただいた。

 

そして

これを機に

全職員に

あらためて

煙草を止めるように

お願いした。

 

副流煙による二次喫煙問題は

いまさら古くて

衣類や壁紙に染み込んだ成分による

三次喫煙の

害が話題になる

時代である。

 

かつて煙草を吸う助産師が

後々まで

褥婦さんに

不快な思いをさせたこともある。

 

産婦人科

新生児を扱うのに

喫煙者は

適切ではない。

 

喫煙は乳幼児突然死症候群のリスク因子なのだから。

 

当院の

喫煙者を

一人ずつ

呼び出して

「あなたが当院にとってどれだけ大切か

しかし煙草がどれだけ産婦人科にとってマイナスか

煙草を止めてもらうようにニコチンパッチを当院負担で処方する準備がある」ことを伝えた。

 

そして煙草を止められないのであれば

この人出不足の昨今であっても

残念ながら当院では雇用契約

継続できないだろうし

それは

裁判になったとしても

譲らないという話をした。

 

 

師長は

「はい」とだけ言った。

そして煙草を止めた。

 

 

一人は

「やってみます」といって、でも

「自信はありません」と付け加えた。

事務長に辞める相談までしたそうだ。

しかしその後どうやら

煙草を止めてくれたようだ。

 

 

定年後の一年更新にはいっている

年輩看護師は

「先生、いまさら無理ですよ。

40年吸ってきたんだから。

だから、ひと月くらいして

私をクビにしてください。」

と言った。

私は

「わかりました。クビには出来ないので

ご自分から辞めていただくか

次回の更新を考えます。

ただ、とすこさん、注射も上手だし

外来も器用に捌くし

いて欲しいんですよ。」

「でもね、旦那も吸うし

無理ですよ。すみませんけど。」

ひと月くらいして、とすこさんはやめた。

 

うちをではなくて

煙草を。

「ご飯がおいしい!」とかいって。

 

 

 

一番の難関である一人は

一番辞めて欲しくない人材であり

しかし説得は難しいだろうなと思った

男性である。

厨房のシェフである。

 

「プロの職人にむかって

色々いうのは不粋だとわかっています。」

私が切り出すと

「あ、先生が何をいいたいのかわかりました。」

シェフは察した。

 

「わかっちゃいましたか?

ならばすみません、言わせていただきます。

ここは産婦人科です。

赤ん坊がいます。

私は子供が、赤ん坊が好きで

それは自分の子供でなくても

大切です。

もちろんシェフが妊婦さんや赤ん坊と

接することは無いと思います。

それに、もしシェフがいなくなれば

ここの厨房は成り立たないのは分かっています。

外部委託の給食にすれば味は落ちるでしょう。

それでも、です。

例外は作れません。

看護師に煙草を辞めてくれと頼んでおいて

シェフだけ吸って良いというのは

私はしません。

 

できれば

職員全員に

シェフが煙草をやめたのだから

あなたたちも煙草をやめてくださいといいたいです。」

 

その日からシェフは

一本も吸っていない。

 

胸を張って

いえるように

なるのは

もう少し

時が過ぎてからだと

思うけれど

フクイ産婦人科クリニックには

もはや煙草の匂いのする

職員は

一人もいなくなった。

 

綺麗な空気で安心して

妊婦さんを

お迎えできる。

 

 

感謝しかない。